手作り分光器の作り方

 透過型回折格子フィルムを使った簡単な手作り分光器の作り方を紹介します。ネットで「手作り分光器」や「簡易分光器」をキーワードにして検索すると山ほど引っ掛かります。どのホームページでも作り方を紹介しているので、ここで、書くほどのこともないのですが、とりあえず私が使っている分光器の作り方を紹介します。

【用意するもの】
 黒画用紙1枚、透過型回折格子フィルム1枚、アルミホイル(厚手の方が作りやすい)、ハサミ、糊かセロテープ、カッターナイフ、カッティングマットか段ボール(カッターナイフを使うときの下敷き)

注)おそらく、透過型回折格子フィルムが一番手に入りにくい材料だと思います。CDを使って反射型の分光器を作っている例もありますが、透過型の方がはるかに簡単です。エドモンド・オプティックス・ジャパンでシートタイプのものを買えば、15cmx30cmの2枚入り(分光器用としては150枚分)で1200円程度です(送料別)。500本/mm(品番40267-1)と1000本/mm(品番54509-1)の2種類がありますが、後者は高分解能用です。赤から紫までの可視光領域全体をざっと眺めたいのなら、前者の方が良いかもしれません。

【作り方】

  1.  黒画用紙に下図のような設計図を書き写して、ハサミで切り取ります。うっすら色の付いた部分は糊しろです。また、右側と左側にある一辺に20mmの四角はくりぬきます。この時、点線に沿って折り重ねてから切り取ると簡単にできます。切り取ったら、実線で書いた部分は山折りして全体に四角い筒を作ります。糊しろには糊を付けてもよいし、セロテープで貼っても構いません。
  2. 筒ができたら、今度はスリットを作ります。アルミホイルを25mm角に四角く切り取り、それにカッターナイフで一回だけ切り目を入れます。これで高分解能用のスリットができ上がりました。蛍光灯や青空を見るのならばこれで十分です。もし、暗い光を見たい場合には、スリットの幅を広くします。
  3.  回折格子は25mm角に切って、図のように少し斜めになっている右側にセロテープで貼り付けます。糊で貼ってしまうとはがせなくなるので、4辺の端をセロテープで貼る方が良いです。この時、回折格子フィルムの向きに気をつけましょう。蛍光灯や電球などの明かりを覗いてみたときに、両横に色のついた像が見える方向にすると、格子の向きが縦になっています。スリットの向きと回折格子の向きが一致するようにして、なおかつ、四角の筒の端が斜めになっている方向に気をつけて貼ります(図参照)。
  4.  これで出来上がりです。製作時間は15分から30分ほどです(小学生は早いです)。蛍光灯や白熱電球、LED電球、青空などをのぞいてみてスペクトルを観察しましょう。太陽は直接のぞかないように。下の図はその例です。上は蛍光、下は殺菌灯を覗いたものです。

【原理】
 光がいろいろな色のスペクトルに分かれるところの原理はちょっと難しいのですが、下の図を見てください。スリットを通過してきた光が透過型回折格子フィルムに当たると、光の一部は方向を変化させます(回折という)。この時、色によって方向が異なるので、これを覗くと、ちょうどスリットまでの距離と同じで、場所が異なるところにスリットの像が見えることになります。色ごとに方向が異なるので、スリットの像が色ごとに違った位置に見えるのです。これがスペクトルに分かれる原理です。スリットが狭いと隣の色との重なりが小さいので、分解能が高くなります。その代わり、スリットを通過する光の量も少なくなるので暗くなるのです。

【備考】

  1. この手作り分光器の回折格子フィルムの後ろにカメラを置き、スペクトルの写真を撮って、それからスペクトルをグラフにするという作業を行ってきました。この時、もっとも困った点は、スリットと回折格子の格子が完全に平行にならない点でした。これを改良するのには、四角の筒ではなくて円筒の方が良いかもしれません。回折格子は固定にして、スリットは円筒形のサックに取り付けて、回転して向きを合わせると良いような気がします(まだ、試していません)。
  2. 筒の長さは図に書いたものに正確にする必要はありません。長ければ長いほど、分解能は高くなります。